今回は「二度と観たくないのについつい再視聴してしまう後味の悪い鬱映画」である映画「レクイエム・フォー・ドリーム」についてネタバレありで感想と考察を語っていきます。
感想と考察は厳密に言うと違うと思いますが、特に区別せずに自由に語っていきます。
この記事をクリックしたあなたはおそらく既に本作を観ているでしょう。
ネタバレを含みますのでもし観ていない人がいたら、あらすじだけ読んで本作をお楽しみください。
初めに言っておくと、一切容赦ない胸糞映画ですので観られない方も多いかもしれません。
ただ、かなり勉強になる作品でもありますので、一見の価値はあると思います。
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あらすじ
テレビを見るのが何より楽しみな中年未亡人サラは、ある日テレビ番組への出演依頼の電話を受け、お気に入りの赤いドレスでテレビへ出るためダイエットを始める。一方、息子のハリーは恋人マリオンとのささやかな夢を叶えたいと麻薬売買に手を染める。季節が変わり、赤いドレスが着られるようになったサラはダイエット薬の中毒に、麻薬の商売がうまくいかなくなったハリーとマリオンは自らがドラッグの常用者となっていた……。
引用:映画.com
作品情報
原題 | Requiem for a Dream |
監督 | ダーレン・アロノフスキー |
主演 | エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ |
製作年 | 2000年 |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 102分 |
登場人物
引用:Amazon
以下、映画パッケージ左端から順に紹介
サラ
ハリーの母親。未亡人であり、ハリーも同居してはいないため、孤独にテレビを見るだけの日々を過ごす。
甘いものが好きで身体はだらしなくたるんでいるが、大好きなテレビに出演することが決まったことによりダイエットを決意する。
瘦せるために友人のツテで医師を紹介してもらうが、その病院で処方された薬は実は覚せい剤だった。
ハリー
サラの息子。
映画が始まった時点で既にヤク中になっている。
母親想いな一面も垣間見えるが、母親の唯一の生き甲斐であるテレビを質屋に売って違法薬物の購入代金に代えてしまう等、ヤバイ一面も持っており、甘やかされて育ったドラ息子。
ヤクの売買を生業にしているが、恋人マリオンとの幸せな生活を夢見ている。
マリオン
両親が金持ちのお嬢さん。ハリーの恋人。
将来的に洋服の店を出すことを夢見ている。
恋人であるハリーの影響を受けドラッグに手を出す。
そして次第にドラッグのために体を売るようになる。
タイロン
ハリーの友人であり黒人。
成り上がることを夢見ており、ギャングの組織内で成り上がろうとする。
こんな人にはオススメできる!
・「予定調和なハッピーエンド映画なんてクソくらえだ!胸糞映画サイコーだ!」と思っている人
・薬物なんて自分には縁がないと思い込んでいる人
・夢に向かって日々努力している人
どんな映画なの?
この記事を読んでいる方は既に観た方が多いと思いますが軽くおさらいします。
登場人物4人はみんなささやかな夢を持っています。
その夢を叶えるために薬物に手を出し、次第に薬物依存から逃れられなくなります。
そして最後は薬物依存により、叶えたかった夢からは遠ざかり、自身の肉体と精神を破滅させていきます。
失うものがあまりにも多く、最終的に自分の身体に残ったモノは「薬物への禁断症状」のみ。
簡略化して説明しましたが、要するに「夢のために肉体と精神を破壊させていく」という話です(少し解釈が違っていたらすいません…)。
ラストシーンも救いようがありません。
4人とも陰鬱な泥沼の底でもがき苦しみながら生きていくことになるであろうことを想像させるラストです。
まさに生き地獄です。
この4人は、こんな状態になっても自分の肉体と精神を抱えてこれから生きていかなければなりません。
ある意味どんなホラー映画よりも怖いかもしれません。
個人的にオススメのシーン
物語を考察する前に個人的にオススメのシーンを述べます。みなさんにとっておすすめのシーンはどこでしょうか?
ドラッグ摂取描写が秀逸
効果音を巧みに活用してリズミカルに魅せる編集力がすごいです。
ヤクをぶち込むとき毎回このシーンを見せられるので観ているこっちも慣れてきます。
まるで観客にもドラッグ摂取に慣れさせようとしているかのようで怖いです。
サラの変貌ぶり
筆者個人的なMVPはサラです。
そもそも彼女は自らの意思で違法薬物を摂取しようとしたわけじゃないのに、結果的に医師に処方された薬が覚せい剤だったことで自らの肉体と精神が蝕まれてしまったという点でかなりの被害者です。
その変貌ぶりたるや凄まじい。
後半、電車の中でいろんな乗客に絡むシーンとか怖すぎる。
髪色も抜け、表情もまるでゾンビです。
街にこんなおばあちゃんがいたら間違いなく逃げます。
もはや夢に出てきそうです。
実際彼女は本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされています。
ハリーがサラ(母親)を説得するシーン
ハリーは歯ぎしりしている母(サラ)の異変に気が付きます。
「薬を飲んでいるのか?成分は?」と母を問い詰めます。
母(サラ)は「医者に処方されているから大丈夫」みたいなことを言います。
でも、ハリーは「ヤク中になりたいのか?」と母に薬の服用を止めるように説得しようとします。
でもみなさんこう思いますよね「…。どの口が言ってんだよ(笑)お前もヤク中だろ」
ハリーは違法薬物の恐ろしさについて身をもって体験しているからこそ母を必死に救おうとします。
しかし、サラは「あなたの方が薬に詳しいとでも?」と論破します。
それでもハリーは「信じてくれ!俺には分かるんだ」と。
このシーンはまるでブラックコメディ映画を観せられているようでした。
肩から下を切断するシーン
ラスト、ハリーはヤクを注入しすぎて壊死した腕を切断されます。
切断されるシーンが映るのは一瞬ですが、どんなスプラッター映画よりおぞましかったです。
やぶ医者の象徴?
サラが病院で処方された薬が実は覚せい剤だったのですが、「そんなことあるの?」と思いません?
でもこれは「現実ではいい加減な医者もいるから気をつけなさいよ」といういわゆる「やぶ医者」への注意喚起だと捉えました。
映画を観たら分かりますが、実際に医者はサラの顔を見もせずにカルテだけを眺めながら話しています。
その様子がかなり強調されているように感じました。
みなさんもこれを観ると、「確かにこんな医者見たことあるかも…」と思うはずです。
考察
作品をとおして筆者が学んだことを話していきます。
タイトルの意味
みなさん夢はありますか?
別に大それた夢でなくてもいいんです。
本作の登場人物も壮大な夢を持っているわけじゃないです。
みんなささやかな夢を持っているだけなんです。
これを読んでくださっている方にも夢があるかもしれません。
例えば、
・「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」(いわゆる経済的自立のこと)達成したい
・インフルエンサーになってSNSで影響力を持ちたい
・お医者さんになりたい
・ネイルサロンを開業したい
等々
本作の主人公たちは夢を叶えたい気持ちを起点として違法薬物にどっぷりハマっていきます。
つまり、タイトルにもあるように「夢のためのレクイエム」なんです。
より具体的に言うと、「夢があるからこそ肉体的・精神的な死に近づいている」ことを意味するものだと筆者は解釈しました。
夢を持つと必ず執着も生まれる
先ほどもお話ししたように、筆者は「夢があるからこそ肉体的・精神的な死に近づいている」という夢も希望もない解釈をしてしまいました。
日常生活を送る中でこんなことを考えることはあまりないでしょう。
しかし、夢の実現のために日々猛進している人は少し共感できるのではないでしょうか?
夢を持つことで「クソっ!なかなか叶わないな!畜生!」という悶々とした執着が生まれるんです。
例えば「弁護士になりたい」という夢を持っている人いますよね。
弁護士になるためにはまず司法試験にパスしなければなりません。
そう簡単なことじゃないですよね。
「弁護士になりたいという夢はあるけれど、なかなか司法試験に受からない」という執着が生まれます(簡単に合格してしまう秀才もいるかもしれませんが)。
みなさんが持っている夢もそう簡単に実現できるものではないはずです。
なかなか実現できない夢は執着へと変化し、そしてその執着を解消するために良からぬ行動に走っていきます。
本作の主人公たちは執着を解消するために「違法薬物依存」という決して踏み込んではいけない領域に入ります。
じゃあ夢なんて持ってはダメなの?
夢を持つと執着が生まれる。
じゃあ、そもそも夢なんて持たない方がいいのか?
そんなことはありません。
むしろ夢を持つことは素晴らしことだと思っています。
シンプルに考えると「夢」は頑張る原動力になりますよね。
夢があるからこそエネルギッシュに活動できる側面は間違いなくあります。
そして「夢がなかなか叶わない。悔しい…」という執着さえも上手く利用すれば更なる原動力にもなり得ます。
逆に執着に飲み込まれてしまう本作の主人公たちのような人もいます。
つまり、夢そのものが悪いわけではなく、大切なのは夢から発生する執着との付き合い方です。
執着を原動力にするのか、それとも執着に飲み込まれてしまうのか。
この2択だけではないと思いますが、要は「適切な執着との付き合い方」を考えていくことが重要です。
それでも有り余る執着を少しでも消そうとするのなら、運動や趣味を楽しむのがいいと思います。
筆者は精神的に辛くなったら筋トレをすることにしています。
【当たり前!】違法薬物には絶対に近づかない!
「人生何事も経験!」
こんな言葉を耳にしたこと、みなさんありますよね。
食わず嫌いをせずにまずは一度くらい体験してみることが大事。
本当にそうでしょうか?
その最初の一歩からすべては始まるんです。
「一度くらいいいだろう」
この考え方が人生転落への第一歩になることもあります。
薬物においては、最初の一歩を踏み出さないことが重要なんだと思います(当然、筆者は最初の一歩を踏み出していないため経験者ではありませんが、このように断言したいと思います)
本作は薬物依存の恐ろしさを世に広めるために非常に有益な作品だと感じました。
まとめ
いかがだったでしょうか?
本作は間違いなく名作だと断言できます。
もちろん本作が苦手な人もたくさんいるかと思います。
どう考えても、観ていて明るい気持ちにはなれませんから。
例えば初デートで女性と本作を一緒に観ることはオススメできません。
しかし、本作から学べること・改めて考えさせられることはたくさんあります。
一度鑑賞したことある方も今回筆者が話したことを念頭に置きつつ再度鑑賞してみてください。
また他の胸糞映画も紹介していますので、ぜひご覧ください。
今日もご愛読いただきありがとうございました。
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